日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

ハンガー

壊れてしまったハンガーを捨てられずに 服も掛けずに部屋で吊るしているのはなぜだろうか? 実はボロボロになった天使の羽が 引っかかっている 無意味だ 無意味だ 無意味だ 無意味だ 腰が痛い 羽もないのに飛び立とうとした罪だ ある日の秘密基地には 壊れて…

斜視

目を開けるのがだるい 最近はなかったことだ 昔はよくあったんだけどね 目を閉じている方が集中して思考ができるから好きだった 多分、今も 眠りは一瞬のことで その直前の記憶がない 起きる寸前の私は 腕時計をしていないから かなり危うい 右目が悪くて 視…

雪豹

雪豹の子供が 母を呼ぶ鳴き声だけは 残しておいてほしかった 春 何もかもが奪われてしまった 増えすぎた色 多様性は 最後の審判を遅らせてしまう こと だま 「一番強い言葉は?」 「 」 無言 黙ることだけしかできないよ でも できることならば もう一度だけ…

身体

身体がいくつかあったら その一つは哲学を学び その一つは数学を学び その一つは小説を書き その一つは古典文学を読み その一つは短歌を詠むだろう 身体がいくつあったら その一つはつまらない仕事で身銭を稼ぎ その一つは栄養のためにご飯を食べ その一つは…

空咳

自分の空咳で起きてしまう カーテンの開け放たれた窓 カーテンは閉めていたはずだ うろ覚え 窓から見えるのは、少しだけ目を開けた夜空 目の前をひらりと飛び去る空蝶 昔送った空メール あなたの咳がうるさくて眠れないと 妻が言う 昔喘息の彼女に僕が言った…

カーテン

怖い夢を見ていた気がする 不意に夜中に目が覚め 窓の方を見てみれば カーテンが開いていて そこから月が見える 寝る前に閉めたはずだが 起きて閉めなくては と半覚醒の頭で考えるが 眠気には勝てずに そのまま再度眠りについた 最後に見えたのは 宇宙の一番…

二十二時

二十二時の私は どうしてこんなにも 暗く 眠いのだろう 二十四時の私は きっと夢の世界の住人で 朝七時の私は 明るい世界を謳歌しているのに違いないのに 二十二時の私は あんまりにも眠いものだから 二十四時の私と 七時の私に 替わってほしいとお願いをし…

意味

春の 生き物たちが起き出しているその横を 遠慮がちに走り 木と木の間をくぐり抜ければ なんだか全てのことには 意味があるような気がしてくる 花の咲くことや 散ること 枝の生え方や 葉脈 切り株の同心円 走った後の荒い呼吸 誰かの体温 繋がれない手 年々…

雨の降り出す気配は何となく分かる いつ降り終わるかは予想できない ただ いつかはやむという事実だけが 胸の中の森にはあって そんなぼんやりとした感覚の中 雨が葉を濡らす音を聞きつつ 黒く染まっていく地面を眺めている 壁 いつかの恋の始まりは 予測で…

震えと痺れ

震えと痺れは何が違うのだろう 父親と会う時、恐ろしさのあまり体が震える 母親と会う時、緊張のあまり頭が痺れる (いいぞ) (その調子だ) (今だ) (いけ) タイミングが合わない 高速バスのターミナルには いくつもの死が埋められている その上を 毎日…

性欲

走っている最中に 下ばかり見ていると気が滅入るから 上の方を見るようにする 空や 鳥や 雲の類い そして萌木の 凝縮された生命力に 包まれたいとだけ思う それでも とうの昔に失われたはずの性欲が なぜか起き上がってくる それには目をそらして 所々に見え…

呼吸

朝 新緑の公園を一人歩く 思い切りする深呼吸 切り裂かれる陽の光 まだ誰の肺も通っていない空気を 私が一番乗りをする 美味しい つまり、二酸化炭素が少ない 独り占めをしている 空間、時間、私自身 ”二酸化炭素は不要なんだ” そう母に告げた時 「植物にと…

始まり

ここがこの記事の最初の行だ 最初に書かれた言葉は(日付とタイトルは別にして)↑である だんだんと言葉は蓄積されてゆく 古いものが上に溜まってゆき、新しいものが下へ積もってゆく 新しいものが下に増えてゆくが これも『蓄積』と呼べるだろうか 古い言葉…

理由

僕には 生きるべき理由がない 死ぬべき理由もない あるのは 書きかけの小説 読みかけの詩集 締め切りギリギリに出した短歌 明日の分の生活費 明日なくなったら困るものがないっていうのは 生きるべき理由がないってことかもしれない AppleやGoogleやFacebook…

壊疽

静かな眼差しだ 彼女の その冷たい瞳の奥では 今まさに一つの星が終焉を迎えようとしている 白色矮星 眩い音、冷たさ 星の終わる時 天上の鈴に似た音が鳴るだろう チリン チリン 言葉を殺そう そうしないと無意味だから 生きた言葉ほど 無意味な存在はない …

防空壕

夢の中ですら分かり合えないっていうのは 僕にとっては悲劇だ 空襲警報 防空壕へ避難する人々 泣き叫ぶ赤子 それを懸命に宥める母親 首を絞めた時の手の感触を 覚えているか 徐々に冷えていく体温 体から力は抜けていく だらんと手が地面へと伸びている 自ら…

毎時間何かが失われていく サラサラと (正確でない表現は好きじゃないんだけど) 夢のぼんやりとした感じが好きだ さっきまで手を繋いでい人が 気づけば変わっている 彼女は彼に 恋人は友達に 親は他人に 質量はエネルギーに 空間は時間に そのぼやけた存在…

言葉

呼吸が苦しくなる 周りの音が聞こえなくなる 世界が止まって私が前に動いているのか、 私が止まって世界が後ろに動いているのかが分からなくなる 景色は遥か後ろへと流れていく 亜光速で移動していく、私が(スターボウが見える) 呼吸の仕方を忘れるなんて…

作品

僕はこの 僕の生み出した 子供のような作品を 子供そのものと言ってもよい作品を 手放すことができない 手元に置いておけば ゴミにならなくて済む作品を どうして手放すことができようか 綺麗な宝石箱に 仕舞い込めば 誰にも見せることなく 箱の中で 輝き続…

夢の中へ

夢の世界に行く前に 実は飛行機に乗っている 少し贅沢に ビジネスクラスなんかにして 上等のサービス うまい酒と うまい食事と ゆったりとした座席 でもその時の記憶はない 夢にいるとき 俺は俺ではないか もしくは存在を黙殺されていて どちらにしろ 誰も俺…

恋は爛れた皮膚です 熱いのに冷たい 恐ろしいのに惹きつけられる 明るいのに暗い それが僕のリビドー(性的衝動)なのです スタンダールの声 丁寧な生命の描写 生命? 日常? 世界? 阪神大震災 地下鉄サリン事件 フェルマーの最終定理 続く黙祷と 証明活動

超丁寧な暮らし

丁寧な暮らし 歩みは遅く 一歩ずつ 確実に よく噛んで ゆっくり食べる 手作りの絵本 284色のクレヨン 木造図書館 結末の変わり続ける物語 シュプレヒコール 鉱石ラジオ ランタン 手作りベーコン 天体望遠鏡 銀色のソーダ水 三十年かけて育まれる愛 終わらな…

プラスチック

クリエイティブの死 保存された何か 僕、私、何者でもない生 カバンにはいつも プラスチックのナイフとフォークが入っている それらを使って いつか食べたい たくさんの美味しいもの 生きるために 必要な栄養素 必須アミノ酸 たん白質 ヴァイタミン 水 有機…

詩について

窓際のディスプレイにはガラスの容器が置かれている。 僕はそれを遠くから眺める。有り体に言えば、ガラスには外からの光がキラキラと反射してとても綺麗だ。 一歩ずつそれに近づいてみる。ゆっくりと、慎重に、音も立てずに。 そうやって近づいていくごとに…

宇宙船

鬼灯の宇宙船に乗って 銀河へ言葉の種を植えにゆく 言葉は一度死ななくては意味を持てない 僕らはたった一度の死で意味を失ってしまうけれど (君はきっと元々意味なんてなかったと言ってそれを否定するだろう) 天の川の向こう側は 白黒の世界だ 淡い闇が満…

クリスマス

こういう季節はどうだろう。 ランタン。冬眠。 ひっきりなしに、人が出入りする街。 おばあちゃんはおてだまがじょうずだ。 ぽーん、ぽーん、とリズミカルに手の中の玉が入れかわっていく。 ぽーん、ぽーん。 手にしたと思ったものが、次の瞬間には宙に浮い…

時間を愛する

四季を愛するとは 時間を愛することだ 彼は変化を恐れることなく 一瞬一瞬の美しさを捉えようとする 彼は老いを恐れることなく 死を正しく受け入れている 僕は常に死を恐れるが それは常に後悔をしているから 常にやり直しを求めているから 有限を恐れ、終わ…

草を思う

率直に申し上げて、きみのことは分からない。 正確に言えば、何かを理解することなんて出来たことがない。 分かる、とか、分かり合う、とか、 ぼくにとっては一番遠い感情の一つだ。 だってそうだろう? きみの立場に立つことは出来ても、 きみの心を理解す…

RAIN TRAIN

とある日に とある雨の中 とある人が とある電車で とある海を目指し とある夕陽を見た これは とある生涯 とある生活 とある生命 とある死 とある人と 友だちになった とある人は とある人と とある恋に落ち とある恋人となった とある人の とある恋人は と…

今さら

雨 雨 雨 今さら 母はそういう表情をする 今年の夏は水不足になりそうです 7月にキャスターが言っていた 僕らはボルビックを飲みながら そのニュースを聞いていた 牛 牛 牛 今さら クラスメイトはそういう表情をする 世界的に食糧が不足しています 9月に先生…