日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

スマホ

 スマホを交換した。iPhone XS(店で「アイフォンエックスエス」と呼んだら「アイフォーンテンエスです」と店員に訂正されてムカついた)。元々iPhone 6を使っていて、iPhone 8でいいかなと思っていたのだが、iPhone 8iPhone Xは64GBのモデルしかないと言われてしまったので、悩んだ結果、一番新しいのにした。
 iPhone 4Sを買ったのが2012年で、iPhone 6を買ったのが2016年で、今回iPhone XSを買ったのが2019年。購入間隔が、4年→3年と短くなっている。次は2021年に買うかという話になるけど、正直なところ今回一番新しいのを買ったのだから、5年位使いたい。でも、多分その前に買い換えることになると思う。今のスマホは5年も使えるように設計されていない。大抵バッテリーがダメになる。
 今回買い換えたのも、ディスプレイが壊れてしまったからなのだけれど、これも使おうと思えば使い続けることができた。ただ、バッテリーがもうだいぶへたってきていたし、動きもだんだん遅くなっていたし、iOSのアップグレードもそろそろできなくなってソフトも使えなくなりそうだから、ディスプレイ交換するくらいならということで、機種変更をしてしまった。今まで買う時は一括で購入するようにしていたのだけれど、手持ちがないので、分割払いにした。この先二年間購入代金を支払い続けることで、たった今最新機種を手にすることができる。どこかいびつだ。「現在のものに対して支払いを未来に行うのは借金だが、未来のものに対して支払いを今行うのは投資である」というのは今考えた言葉だけれど、つまりは借金をしている。
 まあ、とにかく借金をすることで、最新機種が手に入る。容量が64GBから256GBになった。4倍だ。iTunesの曲を全部入れてもまだ半分以上空きがある。パソコンのiTunesの曲は全部聞き終わるのに46日かかるのだが。そして、この中でもうこの先一生聞くこともない曲がある可能性がある。なんか悔しいので、とりあえず音楽を全部入れた。昔はiPodで40GB容量があるというのだけで、無限に音楽を入れられる気がしたけれど、いつの間にかそれだけでは足りなくなってしまったようだ。そして、iPodはHDDで壊れやすかったけど、今はメモリだ。壊れにくい。
 それでも、多分5年はもたないだろう。なんだか生きるのを急かされている気持ちにすらなる。齢をとったのだろうか。とったのだろう。壊れてもいないものを、無理に買い替えている感じ。新しいものが無条件に良いと信じること。新しいことは確かに良いことだけれど、古いもので十分生きていくことはできるはずだ。綺麗な写真を撮ることも、高画質のゲームをやることも、マルチタスクを行うことも、本当は必要ないことなのかもしれない。
 ソフトウェアがどんどん新しくなっているのに、ハードウェアがついていけていない感じ。落としても割れないガラスとか、水につけても大丈夫な仕様とか、バッテリーの持ちが良いとか、そういう方向に進化すると買い替えが進まないから良くないのだろう。Windowsも7で十分仕事も趣味もいけるけど、そのサポートもいずれ終わるし、PCの寿命も10年も持たない。公転速度が変わらないのに、自転速度だけが早くなる。一日が慌ただしく過ぎていく内に、桜が咲いたことにも散ったことにも気づかないでしまう。
 
 確かにテクノロジーの進歩は凄いと感じる。しかし、それと共に人間の心も進歩しているのかというとどうなのだろう。
 そもそも、インターネットは確かに素晴らしい技術だが、人類が火を使用したことや、文字の開発、時間の概念を身に着けたことや、ゼロの発見に比べてダイナミックな変革かというと疑問である。
 もし、人間の本質的な価値観というのが変わっていないのだとしたら、例えば平安時代の人が源氏物語を読んだ時の感動と、今の私達が読んだ時の感動はそう変わらないのだろうか。枕草子の「春はあけぼの」の心の動きは今の私達にも通用するものだろうか。きっとするだろう。私個人としては、そういった本質的なものを追い求められればいいのにと思う。まだよく分かっていないけれど。
 
心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ/西行
 
どうか僕に海を与えないでください
美しい景色を知ってしまいますから
どうか僕に音楽を与えないでください
心地よいメロディを知ってしまいますから
どうか僕に花を与えないでください
芳しい香りを知ってしまいますから
どうか僕に食べ物を与えないでください
忘れられない味を知ってしまいますから
どうか僕に恋人を与えないでください
人と触れ合う喜びを知ってしまいますから
 
どうか僕に両親を与えないでください
産まれてきてしまいますから
どうか僕に空間を与えないでください
あなたの場所を奪ってしまいますから
どうか僕に時間を与えないでください
死ぬ恐怖を知ってしまいますから
どうか僕に思考を与えないでください
眠れない夜を迎えてしまいますから
どうか僕に兄弟を与えないでください
憎しみと許しを知ってしまいますから
どうか僕に過去を与えないでください
思い出に浸って帰ってこれなくなりますから
どうか僕に未来を与えないでください
何かに期待して生き続けてしまいますから
どうか僕に物語を与えないでください
夢を持ってしまいますから