日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

再会と再開

 もう何年も会ってない人と、偶然街で再会をした。そういったことは人生においてそうそうあることではないが、全くないことでもない。久しぶり、偶然だね、元気だった、といったお決まりの会話がなされた後、お互いに用事を抱えていたので、今度ゆっくり話をしましょうと言い合い、連絡先を交換して別れた。それが一週間前。二週間後の土曜日に会う約束をしている。
 次に出会って、何を話そうか。お互いの近況報告を済ませ、過去の思い出話に花を咲かせ、それからは? 今更夢や未来の話を? この歳になって?
 単なる偶然にすぎないと言ってしまえばそれまでだが、奇妙な巡り合わせにも思える。本来であれば必要のない再会である。彼女と別れてから今まで、私の人生において、彼女の存在はそこまで質量の大きいものでもない。今まで私の人生において彼女の存在は必要なかったし、これからもそうだろう。極端なことを言ってしまえば、私にとって彼女は死んでいるのと同じだ。彼女にとっても、私の存在はきっとそうだろう。もし、街で偶然再会しなければ、彼女の死すら知らなされないままに私は死ぬまでを過ごしていたかもしれない。今なお、観測外の宇宙では、存在を知ることのない星が生まれては死んでいるのだろう。観測可能な範囲の宇宙の中ですら、私は星が消えたことに気づきもしない。幼い頃に勝手に名前をつけた、青く輝くその星も。
「この世界ではもう出会うことはないかもね。きっと次に会えるのは、別の世界だ」
 そんな感じのことをお互いに言っていた。本来出会っていけない存在。出会うべきではない存在。私が二週間後の土曜日に会うのはきっと死者だ。私は彼女にとっての死者として、彼女は私にとっての死者として、生者の世界でもう一度出会い、話をすることになる。なんだか、何かを冒涜しているようにも感じる。死者と出会う時、それに相応しい格好がある。相応しい場所がある。相応しい時間がある。私はきちんとそれを満たしているのだろうか。
 そうして再会をしてしまえば、本来起こってはいけないことが起こってしまえば、おそらく次の扉が開かれる。この世界ではない、どこか別の世界への扉が。私は(あるいは彼女は)、その世界に引きずり込まれる。私は今一度この奇妙な巡り合わせについて考えを巡らせてみる。そして、この前出会ったときの彼女の顔を思い出そうとする。しかし、うまくいかなかった。彼女の顔は、数年前に別れた時そのままで保存されていて、上書きがされていなかった。次に出会うことができれば、その顔は更新されるだろうか。おそらくされないだろう。死者は齢を取らないからこそ、美しく、尊いものなのだ。
 
 
 
短歌を始めるきっかけが、タイムラインに千種創一さんの以下のツイートがリツイートされてきたからというのをふと思い出して、なんか書きました。