日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

斜視

目を開けるのがだるい
最近はなかったことだ
昔はよくあったんだけどね
目を閉じている方が集中して思考ができるから好きだった
多分、今も
 
眠りは一瞬のことで
その直前の記憶がない
起きる寸前の私は
腕時計をしていないから
かなり危うい
 
右目が悪くて
視野はバランスを欠いている
斜めった景色
錯視の空間
片目で見れば
時間は平坦でのっぺりとしている
でもそれが私の見える全てで
語ることのできる全てだ
 
音が気になる
匂いも
猫の鳴き声
懐かしい歌に似ている
誰だっけ? この声は
 
一番古い記憶は
生まれる前のお話
母に手をとられて歩く兄
それが私だった
兄は私で
私は兄で
そうでないなんて
誰にも証明できず
不確かな記憶と
母の手の温もりが
私の必要条件だとしたら
これもまた
私を構成する一種の公式だろう
 
私はまだ
囚われている
母の歌声と
甘い匂いの記憶に
それより以前は覚えておらず
それより以後は存在をせず
生まれてさえこなければ
目を開けずに済んだのに
余計なものを見ることもなく
記憶の中の
グロテスクな歪んだ部屋に
引きこもっていられたのに