雨
雨の降り出す気配は何となく分かる
いつ降り終わるかは予想できない
ただ
いつかはやむという事実だけが
胸の中の森にはあって
そんなぼんやりとした感覚の中
雨が葉を濡らす音を聞きつつ
黒く染まっていく地面を眺めている
壁
いつかの恋の始まりは
予測できず
いつか終わることだけを
知りながら
私は街を歩いていた
五月
透明な壁に囲まれた街を
いつか出よう
いつか出ようと
呪文のように唱えて
ポケットの中の小銭は
街を出るための電車賃には
いつもギリギリ足りていない
ひとつ、ふたつ
数えて、足りなくて、また数えて、また足りなくて
パンとミルクを
買いに出かけて
終わる一日
終わる一月
終わる一年
終わる一生
雨
やんだだろうか
森の動物達の
動き出す気配で
そうか
夏が
来るはずだと
そうしたら
壁の向う側にある
海を見に行こう
いつかの約束のように