意味
春の
生き物たちが起き出しているその横を
遠慮がちに走り
木と木の間をくぐり抜ければ
なんだか全てのことには
意味があるような気がしてくる
花の咲くことや
散ること
枝の生え方や
葉脈
切り株の同心円
走った後の荒い呼吸
誰かの体温
繋がれない手
年々少しずつ
強まる日差しの色
僕は小説でも書いてみようかと思い
自然には背を向ける
人間を見なくては
人間
人間ってなんだろう
今まで見てこなかった存在が
急に目の前に現れたようだけれど
僕が見ているのは
果たして
人間なのか
そうじゃないのか
僕の見ている行為は
意味があるのか
ないのか
と
無意味なものが恋しくなってきて
無意味に叫びながら
夜中の春を
駆け抜けてゆく