日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

ない

私には 体がない 心がない 顔がない 影がない 名前がない お金がない 住むところがない 職がない 服がない 寝る場所もない 痛みがない 快楽がない 悲しみがない 喜びがない 怒りがない 歌がない 楽器がない 言葉がない 思考がない 私には 故郷がない 私にあ…

夜になる 二時間ほど眠ってしまったようだ それよりも短いかもしれない あるいは長いかもしれない もう何百年も経ってしまったのかもしれない 慌てて洗濯物を取り込む すでに辺りは真っ暗で、洗濯物は湿っている 干し始めるのも少し遅すぎた 朝起きられなく…

あ、嫌だなあと思う。 怒っている。感情的になっている。 頭に血が上っている。 それなのに。 胃の辺りに冷たい石を置かれたような気持ちになる。 冷たい、冷たい、石。 ずっと、どこかの遠い山奥の、もう誰もそこには訪れないような、獣や鳥ですらそこに訪…

サイド

サイド、サイド 上から声が降ってくる どういう意味? と尋ねると もう一度という意味だった サイド、サイド、サイド、サイド 容赦なく声が降ってくる もう無理だよ、終わりにしよう 僕の叫びは無視される サイド、サイド、サイド、サイド 途中から数を数え…

はじめて

初めて喋った言葉は覚えていないけど 初めて作った詩のことは何となく覚えている 初めて食べたご飯の味は覚えていないけど 初めて炊いたご飯の味は何となく覚えている 初めて聞いた音楽は覚えていないけど 初めて買ったCDはよく覚えている 初めて読んでもら…

さくら

さくら おまえのめ さくら おまえのはな さくら おまえのくち さくら さくら おまえは死ぬ 等しい時間に 等しい速度で さくら おまえのは さくら おまえのはだ さくら おまえのね さくら さくら 死にゆく姿よ 瞬きをすれば もうおまえはいない さくら さくら…

オイラーについて

オイラーが死んだ時 彼は計算をすることをやめた オイラーが死んだということは 地球上の偉大な計算機が失われ あとには肉の塊が残った 僕が死んだ時 何が失われるのだろう 一匹のひよこを ミキサーにかけた時 何が失われるのか 愛すること 憎むこと 思い出…

まな板

世界が美しくあったのならば。 子供のころ。 私の話には子供の時の話が良く出るが、私自身はまだ大人になったばかりで、 そしてこれから先の人生の思い出の量などは、今までに比べたら塵に等しいと自分でも把握している。 家には大きなまな板があった。 それ…

Twitter自由詩・短歌01(20171013-20180222)

Twitterで出した一行詩とか短歌です。 というか、短歌ばっかりです。 少しずつ、詠んで、自分が苦しんだり癒やされたりすればいいと思ったり。 twitter.com 1. 月がたくさんの太陽を抱えている カレンダーの上 2. 雨が僕らを分けないように 傘を一つわざと忘…

アルビノ

だって「白」って「死」の色じゃないですか 火傷も 白髪も 死に装束も 教会も 病院も 医者も 看護師も 薔薇も 波も 雲も 月も 雪も みんな白い だからアルビノの私に 純白のウェディングドレスをくれたのは 「一緒に死んであげる」って意味で 受け取りますね

豚汁

ずっと視界がぼやけているようだそうやって何十年も海に浮かぶ灰汁を取り続けた 知っていましたか?豚汁は煮込み料理ですそれでは餃子は?餃子は麺料理です 「余った豚肉の中に君のお父さんとお母さんがいるよ」「ここにはお父さんとお母さんはいないよ」「…

新しいフォルダー

いくつもある書きかけのWordファイルずっと奥底に仕舞っておこうと思いデスクトップにフォルダーを作成する「新規作成」→「フォルダー」→「新規作成」→「フォルダー」、……フォルダー中にフォルダーを作成していく階層状に、どんどんどんどん、どんどんどんど…

灯里

「灯里先輩!」 私を慕う小さな女の子 いつも膝小僧に絆創膏を貼っている 可愛い女の子 学校に行く電車で ふと目についた 睫毛の長い肌の綺麗な子 膝小僧から血を流していたから 気まぐれで絆創膏を渡した 犬のように喜んで 聞いてもいないことを ベラベラと…