日々のこと

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メタモルフォーゼの縁側とArtiste

 鶴谷香央理さんの「メタモルフォーゼの縁側」がなんかとても良い。今ならpixivコミックで全話読めるから興味のある方は読んでほしい。もし、Twitterアカウントをお持ちであれば、WEB漫画総選挙というものに投票してほしい(よく分からないけど)。
 
 少しBL要素と言うか、BL漫画を通じて老婦人と女子高生が交流していく話なのだけれど、BLのシーンはほぼないので苦手な人も大丈夫だと思う。
 
この先、含ネタバレ

 

  最初に読んだ時、ゆっくりとした日常の時間の流れや、一人の人の世界が広がっていく感じが良いなあと思って、加えてうららさんが市野井さんにオススメの漫画を渡したいけど悩むシーンや、初めてイベントに行って憧れの作者さんに会うのだけれど緊張して何が何だか分からなくなってしまうシーンが、分かる分かると頷いてしまった。うららさんと市野井さんの二人が徐々に打ち解けていく感じや、二人で漫画の感想を言い合う場面、市野井さんが筆の遅い作者のために長生きしなきゃなあと思うのも良い。あとは、好きなものを好きと思う感情や、好きなことを語り合うのは年齢とか関係ないなあと思う。

 
 私が好きな別のWEB漫画で、さもえど太郎さんの「Artiste」と作品があるのだけれど、何だかこの二つがちょっと似ていると思った。
 
 Artisteはパリの高級レストランで働くジルベールという気弱な青年が主人公の話で、一癖も二癖もある人物がたくさん登場する。でも、みんな悪人なわけではなくて、ただそれぞれが生きづらい理由を心に抱えながら、それでも人の心を豊かにする料理人という仕事に邁進している。その中にマルコという登場人物が出てきて、彼は結構適当な性格で仕事も一つの職場に長続きしないタイプだ。ただ、マルコは順応性が高くて、どんな仕事でも周りと反発することなくそれなりに続けることが出来る。彼がジルベールの働くレストランで皿洗いの仕事に就くところから物語が始まるのだけれど、ジルベールはマルコとは対象的に、人見知りで誰とも打ち解けることが出来ないし、料理人という仕事以外は出来ないタイプだ。しかし彼らが出会うことによって、ジルベールの世界は少しずつ広がるようになる。初期の段階でジルベールは別のレストランに引き抜かれ、マルコはレストランを辞めてしまうのだが、その後もジルベールが色々な人と交流することができるようになるのは、多分マルコと出会ったおかげなのだと思う(現段階ではまだまだ気さくな性格になったとは言えないけれど)。
 メタモルフォーゼの縁側も、うららさんは何だかんだ保守的な感じがして、学校では積極的に友達を作ったりはしないし、周りの人達の変化のスピードに付いていけなくて戸惑ったりしている。しかし、市野井さんと出会うことで、ちょっとずつ世界が広がってイベントに行ったりもする。市野井さん自身も、保守的な感じはあまりしないけど、ちょっとずつ自分の知らない世界を知っていくことで、何となく生活に変化が出ているように見える。
 なんというか、この「自分の知らない世界を知る」という体験がとても素敵で、人の心はこうやって豊かになっていくものなのだと感じた。安定志向のある人は、現状の生活が全く変わらないまま永遠に続くことを願いがちだけど、やはりある日新しい世界を知った感動というのは、何ものにも代えがたいのではないだろうか。
 歳をとってしまうと、頭が固くなって、新しいことを取り入れることに腰が重くなってしまうけど、色々やっていきたいなと思う。なんか漫画の感想ではなくなってしまったが。