日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

草を思う

率直に申し上げて、きみのことは分からない。
正確に言えば、何かを理解することなんて出来たことがない。
分かる、とか、分かり合う、とか、
ぼくにとっては一番遠い感情の一つだ。
だってそうだろう?
きみの立場に立つことは出来ても、
きみの心を理解することは出来ない。
分かった、とか、分かり合えた、とか
人はすごく嬉しそうに話をするけれど、
でもきみたちが持っている世界は、
もっと原初的なカオスだっていうことに、
それを理解するなんて不可能だってことに、
見ている世界は結局表面的でしか過ぎないってことに、
ぼくは随分と前に気がついてしまった。
 
草を思うとき、ぼくは
草の色を思う。
草の形を思う。
草の味を思う。
草の匂いを思う。
草の出す音を思う。
草の肌触りを思う。
草の種類を思う。
花を思う。
実を思う。
種を思う。
芽を思う。
枯れる時を思う。
 
生まれる前を思う。
死んだ後を思う。
 
生まれる前にも季節はあって、死んだ後にも続くのだろう。
ぼくらは草原に横たわり、原始的な姿にもう一度戻る。
理解し合うことが出来ずとも、手をつなぐことは出来て、
二人の間には、風が優しく吹き抜けるだろう。
まどろみの中、次に目をさますその時まで、
ぼくらはいつまでも手をつなぎ続け、
そこに感情はいらないはずだ。
そんな季節を、ぼくは思う。