日々のこと

I'm becoming this all I want to do.

壊疽

静かな眼差しだ
彼女の
その冷たい瞳の奥では
今まさに一つの星が終焉を迎えようとしている
眩い音、冷たさ
星の終わる時
天上の鈴に似た音が鳴るだろう
 
チリン チリン
 
言葉を殺そう
そうしないと無意味だから
生きた言葉ほど
無意味な存在はない
 
ときおり月を眺めよう
三日月は沈む時は赤く
破瓜を思い出させる
 
壊疽
腐りかけた蛹
大人になれない僕ら
 
そう記憶だ
眠る時に思いついた物語が
起きた時に思い出せない
僕が殺した
少年(彼ら)少女(彼女ら)
モノクロで
モノラルで
眠るたびに蘇り
起きるたびに死んでいく
当然その中に
僕も含まれているのだ
今日も
多分
 
秋の終わりと
春の始まりは
何が番うのだろう
冬の始まりと
冬の終わりの違いは
知っているのに
分からなかった

防空壕

夢の中ですら分かり合えないっていうのは
僕にとっては悲劇だ
 
空襲警報
防空壕へ避難する人々
泣き叫ぶ赤子
それを懸命に宥める母親
 
首を絞めた時の手の感触を
覚えているか
徐々に冷えていく体温
体から力は抜けていく
だらんと手が地面へと伸びている
自らの手で
生命を消す感触を覚えているか
自らの手の中で
死んでゆくものの体温を
表情を
手にはいつまでも死の感触が
残り続けて
消えることがないんだ
夢から覚めたあとも
 
壕の中叫ぶ赤子を絞め殺す 聞こえぬように 聞こえぬように

毎時間何かが失われていく
サラサラと
(正確でない表現は好きじゃないんだけど)
 
夢のぼんやりとした感じが好きだ
さっきまで手を繋いでい人が
気づけば変わっている
彼女は彼に
恋人は友達に
親は他人に
質量はエネルギーに
空間は時間に
 
そのぼやけた存在に包まれていると
(青い錠剤を全部飲んでしまった)
(一面のねもふぃら畑が見える)
(手には一輪のあねもねの赤)
(起きたくない)(起きなくちゃ)
 
目が覚めた
世界が、全部が固い
何かに触れると、何かは反発をしてくる
作用反作用
質量保存
法則
固い
現実
嫌いだ

言葉

呼吸が苦しくなる
周りの音が聞こえなくなる
世界が止まって私が前に動いているのか、
私が止まって世界が後ろに動いているのかが分からなくなる
景色は遥か後ろへと流れていく
亜光速で移動していく、私が(スターボウが見える)
 
呼吸の仕方を忘れるなんて、眠る前のようだ
死ぬ前も、眠る前のように呼吸を確かめるんだろうか
どうやって呼吸をしていたっけ
呼吸を止めたらマズい、なんて考えながら
誰も教えてくれない
 
言語第一主義で考えれば言葉で感動するなんてありえない
音楽だったらあるのかもしれない
感動とはなんだろう
人に説明できたら嘘くさく感じるし
説明できなければ虚ろに感じる
涙は流れない
血の一滴ほども
 
遅れて聞こえてきた耳鳴りは
ドップラー効果で音程が狂っていて
兄の下手くそな歌に似ている
涙も遅れてやってきて
悲しいのか
嬉しいのか
寂しいのか
波の音を聞けば
何かを忘れられるだろうか
 
感じていることが
本当だって
証明できるだろうか

作品

僕はこの
僕の生み出した
子供のような作品を
子供そのものと言ってもよい作品を
手放すことができない
 
手元に置いておけば
ゴミにならなくて済む作品を
どうして手放すことができようか
綺麗な宝石箱に
仕舞い込めば
誰にも見せることなく
箱の中で
輝き続けるというのに
 
君の作品を
僕は人に紹介することができない
君の作品を読んだとき
それは僕の内側に入り込んでしまい
それを誰かに見せることは
僕自身を内側から食い破られることだからだ
 
僕の作品と
君の作品を
遠い砂漠の真ん中に
深い海の底に
未踏の山の頂上に
宇宙の果てに
置いてきてしまえば
それはゴミにもならず
星になる日まで
ただそこで光っているだろう
それが僕にとって
一番嬉しいことだ

夢の中へ

夢の世界に行く前に
実は飛行機に乗っている
少し贅沢に
ビジネスクラスなんかにして
上等のサービス
うまい酒と
うまい食事と
ゆったりとした座席
でもその時の記憶はない
 
夢にいるとき
俺は俺ではないか
もしくは存在を黙殺されていて
どちらにしろ
誰も俺のことを覚えていない
俺は忘れられた
絶滅した獣だ
 
飛行機に乗っている間は
飛行機雲を見ることができない
夢の中にいる時は
現実世界の俺を見ることができない
夢に尻尾みたいに付随している
現実世界の俺が
真っ直ぐ空に伸びてゆき
そして消えてしまっても
夢の世界の住人は
誰も気づかないんだ
それがとても寂しい

恋は爛れた皮膚です
熱いのに冷たい
恐ろしいのに惹きつけられる
明るいのに暗い
 
それが僕のリビドー(性的衝動)なのです
丁寧な生命の描写
生命? 日常? 世界?
 
続く黙祷と
証明活動