壊疽
静かな眼差しだ
彼女の
その冷たい瞳の奥では
今まさに一つの星が終焉を迎えようとしている
眩い音、冷たさ
星の終わる時
天上の鈴に似た音が鳴るだろう
チリン チリン
言葉を殺そう
そうしないと無意味だから
生きた言葉ほど
無意味な存在はない
ときおり月を眺めよう
三日月は沈む時は赤く
破瓜を思い出させる
壊疽
腐りかけた蛹
大人になれない僕ら
そう記憶だ
眠る時に思いついた物語が
起きた時に思い出せない
僕が殺した
少年(彼ら)少女(彼女ら)
モノクロで
モノラルで
眠るたびに蘇り
起きるたびに死んでいく
当然その中に
僕も含まれているのだ
今日も
多分
秋の終わりと
春の始まりは
何が番うのだろう
冬の始まりと
冬の終わりの違いは
知っているのに
分からなかった
言葉
呼吸が苦しくなる
周りの音が聞こえなくなる
世界が止まって私が前に動いているのか、
私が止まって世界が後ろに動いているのかが分からなくなる
景色は遥か後ろへと流れていく
亜光速で移動していく、私が(スターボウが見える)
呼吸の仕方を忘れるなんて、眠る前のようだ
死ぬ前も、眠る前のように呼吸を確かめるんだろうか
どうやって呼吸をしていたっけ
呼吸を止めたらマズい、なんて考えながら
誰も教えてくれない
言語第一主義で考えれば言葉で感動するなんてありえない
音楽だったらあるのかもしれない
感動とはなんだろう
人に説明できたら嘘くさく感じるし
説明できなければ虚ろに感じる
涙は流れない
血の一滴ほども
遅れて聞こえてきた耳鳴りは
ドップラー効果で音程が狂っていて
兄の下手くそな歌に似ている
涙も遅れてやってきて
悲しいのか
嬉しいのか
寂しいのか
波の音を聞けば
何かを忘れられるだろうか
感じていることが
本当だって
証明できるだろうか
作品
僕はこの
僕の生み出した
子供のような作品を
子供そのものと言ってもよい作品を
手放すことができない
手元に置いておけば
ゴミにならなくて済む作品を
どうして手放すことができようか
綺麗な宝石箱に
仕舞い込めば
誰にも見せることなく
箱の中で
輝き続けるというのに
君の作品を
僕は人に紹介することができない
君の作品を読んだとき
それは僕の内側に入り込んでしまい
それを誰かに見せることは
僕自身を内側から食い破られることだからだ
僕の作品と
君の作品を
遠い砂漠の真ん中に
深い海の底に
未踏の山の頂上に
宇宙の果てに
置いてきてしまえば
それはゴミにもならず
星になる日まで
ただそこで光っているだろう
それが僕にとって
一番嬉しいことだ