呼吸
朝
新緑の公園を一人歩く
思い切りする深呼吸
切り裂かれる陽の光
まだ誰の肺も通っていない空気を
私が一番乗りをする
美味しい
つまり、二酸化炭素が少ない
独り占めをしている
空間、時間、私自身
”二酸化炭素は不要なんだ”
そう母に告げた時
「植物にとっては必要なの」
と優しい母は教えてくれた
でも人間にとっては不要なのに
「誰かにとって不要なものでも誰かにとっては必要なんだよ」
と博識な父は教えてくれた
人間は
きっと地球には不要なのだけれど
他の星にとっては必要なんだろう
赤は早熟の色
青くない春
赤茶けた森
ソバカスだらけの顔
人参色の髪
血塗られた道
朝焼け
だ
「朝ごはんまでには帰ってきなさい」
時間に厳しい祖母が言っていた
もう一度深呼吸をする
体内の古いものは押し出されて
新しいものが取り込まれる
私の一部だった
なにか、が
失われたのだろうか
口の中は
鉄の味がした